危険運転致死傷罪
[2009.5.15追記] 今日15日、福岡高裁は、業務上過失致死傷罪とし7年の刑とした一審判決(福岡地裁)を誤まりとして破棄し、危険運転致死傷罪を適用し20年の刑を申し渡した。一審において今林被告の酔っ払い状態を「危険運転」に当たらない程度の状態としたものを、陶山裁判長が「危険運転」に当たると法解釈を改めたことによるものである。福岡地裁の判決に納得が行かなかっただけに、心情的には拍手喝采の気持ちである。しかし裁判員制度の施行を直前に控えて、何ら新しい証拠が提出された訳でもないのに、裁判官の法解釈如何あるいは匙加減によって量刑が大きく左右されるというのは困ったものである。恐らく最高裁へ上告されると思われるので、「危険運転」状態とは何をもって判断するのか、最高裁の判決を待たなければならなくなる。最高裁は速やかに何らかの対策を執らないと、裁判員裁判制度そのものが混乱することが目に見えている。「飲酒」運転による事故には全て「危険運転致死傷罪」を適用するように解釈を統一すべきである。
[2007.12.18記] 2006年8月25日、酩酊した今林大被告が被害者大上さん一家の乗っていたRV車に追突して海中に突き落とし、幼児3人を死亡させた衝撃的な飲酒運転による事故の判決を前に今日、福岡地裁が「訴因変更」の命令を出した。危険運転致死傷罪の適用が微妙であるので、飲酒運転罪(具体的には業務上過失致死傷罪)の適用が出来るようにしておかないと、争点が「危険運転致死傷罪」に絞られ裁判所は「無罪」を出さざるを得ないこともあり得る、ということが理由のようである。今林被告は被害者を救助することなく現場から逃走し、さらに友人に水を持って来させてそれをガブ飲みし、アルコール濃度を下げる行動をとった。結果としてこの行為が危険運転致死傷罪の「四ツの構成要件(成立要件:下記太字)」該当を曖昧にし、この法律の適用を難しくしたようである。しかし、飲酒量や酩酊度は店や友人の証言も得られているようだし、「水を飲んだ後のアルコール濃度が構成要件に該当しない」と決め付ける必要も無いように思う。このような悪質な大事故というのは滅多にあることではない。この法律自体、このような極めて悪質な飲酒運転を罰するために多くの国民の要請を受けて出来た法律であることを鑑みれば、「四ツの構成要件」の判定方法に問題があるのであって、むしろ構成要件の方を見直すべきであろう。にもかかわらず、この危険運転致死傷罪が適用できないと言うのでは、この法律を作った意味が無い。飽くまで、この法律は「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させて人を死傷させた場合」という法理に立脚すべきである。
刑法第208条の2
アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。
2 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。
飲酒運転を「故意犯」と位置付けしたこの法律が出来たとき、飲酒運転が原因である犯罪の中に業務上過失罪となる「過失犯」と危険運転罪となる「故意犯」とが混在し、その判断の分かれ目がアルコール濃度や速度や脇見運転などに依ることに一抹の危惧を抱いていた。やはり、「飲酒」運転そのものは、飲酒量の多少等で云々するのではなく、「飲んだら乗るな」の原則に則って無条件に「未必の故意」である「故意犯」として法制化すべきであった。そうすれば、今回のようなことが起こる余地は無かった。この法律が立法化された社会背景からすれば、現状の法律のままでも立法趣旨に沿った「判例」を作れるのではないか。